猫がドッグフードを食べてしまった経験はありませんか?
猫と犬を一緒に飼っている家庭で見られる光景ですが、実は猫にドッグフードを与えるのは良くないといわれています。
見た目はキャットフードとよく似ているのに、なぜでしょうか。
今回は猫にドッグフードを食べさせてはいけない理由と、食べないようにするための対処法をお伝えします。
【理由①】猫に必要な栄養素が入っていない
そもそも、猫と犬とでは必要な栄養素が異なります。
猫は猫、犬は犬のからだに合わせてフードの研究・製造がされているので、明確に「キャットフード」「ドッグフード」と区別されているのです。
特に、猫にとって必須アミノ酸と並ぶ必須栄養素である「タウリン」が重要。(※1)
猫は体内でタウリンを合成できないため、食事で補う必要があります。
反対に犬は体内でタウリンを合成できるので、ドッグフードにはタウリンが添加されていません。
そのほか、キャットフードに比べてドッグフードはタンパク質やビタミンも少なく配合されているため、猫に必要な栄養素が不足してしまいます。
それぞれ重要な栄養素について、もう少し詳しく説明しましょう。
(※1)タウリンはカルボキシル基を持たないため、アミノ酸には分類されない
タウリン
タウリンは肉や魚などの動物性タンパク質の中に含まれており、猫にとっては必須栄養素です。
キャットフードにはタウリンが添加されていますが、ドッグフードには添加されていません。
猫はタウリンが不足すると「タウリン欠乏症」に陥り、次のような疾患を引き起こす原因となります。
- 網膜萎縮、失明(目の病気)
- 心筋症
- 生殖異常
- 発育異常
- 免疫力低下
タウリンの配合量が少ないキャットフードを与えている場合はサプリメントで補わなければならないほど、猫にとって重要な栄養素なのです。
ちなみにタウリンを過剰に摂取しても、不要な分は吸収されずに尿と一緒に排出されます。
したがって、タウリンの摂りすぎを心配するよりはしっかりと摂取できているかを重視したほうがよいでしょう。
アルギニン
アルギニンも猫の体内では合成できない栄養素です。
厳密にいうと、アルギニンを生成するために必要なオルニチンとシトルリンが生成できないため、食事によって直接アルギニンを摂取しなければなりません。
アルギニンには、アンモニアの毒素を分解して尿素に変え、尿と一緒に排出させる役割があります。
そのためアルギニン不足になると、血中にアンモニアが蓄積され「アンモニア中毒(高アンモニア血症)」を引き起こしてしまうのです。
アンモニア中毒は、肝機能不全によって脳にまで影響が及ぶ「肝性脳症」の原因となります。
ビタミン類
タンパク質から生成されるビタミン類も、猫の体内では合成できない栄養素です。
特に必要とされているのは、ビタミンAやナイアシン。
ドッグフードに入ってはいるものの、猫の必要量に対して不足しています。
ビタミンA(レチノール)
ビタミンAは主に視力や皮膚の健康に必要な栄養素です。
不足すると次のような症状の原因となります。
- 夜盲症(とりめ)
- 歯、骨の発育不全
- 皮膚の角質化
- 被毛のツヤがなくなる
ナイアシン
ナイアシンは主に皮膚や免疫力向上に必要な栄養素です。
不足すると次のような症状の原因となります。
- 皮膚炎
- 下痢
- 衰弱
動物性タンパク質
上記で説明した必須アミノ酸はタンパク質に含まれています。
猫は完全肉食動物なので、半雑食である犬の約2倍の動物性タンパク質が必要です。
当然、ドッグフードには犬に必要な分しか含まれていません。
動物性タンパク質が不足すると、皮膚や被毛のトラブルのほか、さまざまな疾患が引き起こされます。
【理由②】猫が避けるべき食材が入っている
猫にドッグフードを与えてはいけないもうひとつの理由は、猫が避けるべき食材が入っているから。
猫は完全肉食動物のためほかの哺乳類と比べて腸が短く、植物類の消化に適していません。
ドッグフードには野菜などの食物繊維が豊富に含まれている商品が多く、猫が多量に食べると消化不良(下痢や便秘)の原因となります。
ちなみに、野生の猫が草を食べる理由は食事のためではなく、胃に溜まった毛玉を吐き出すためです。
ペット用に販売されている猫草も同様で、おやつ感覚で食べているわけではありません。
また、通常食べない食材が入っていると栄養バランスそのものが崩れてしまい、健康に害を及ぼす危険性があるのです。
そもそも猫と犬では、食性がまったく違うと理解しておきましょう。
少量なら食べても大丈夫
猫がドッグフードを食べた場合、つまみ食い程度の少量であれば問題ないとされています。
したがって、食べてしまったからといって「食べちゃった!どうしよう!」などと焦って何らかの対処をする必要はありません。
しかし、日常的に食べているとなれば早急に対処しなければなりません。
ドッグフードがメインの食事になってしまう事態だけは、絶対に回避してください。
ドッグフードを食べる猫への対処法
猫にドッグフードを食べさせないようにするためには、少しの工夫が大切。
そこで、今すぐ簡単にできる対処法を紹介します。
①犬と猫で食事の時間をずらす
食事の時間を同じにすると、猫が犬のご飯を横取りする場合があります。
時間をずらして犬と猫の食事のタイミングを明確にしてあげるとよいでしょう。
②置く場所を変える
猫のご飯皿は犬が届かない高い場所に置く、犬はケージ内で食事させるなど、お互いに横取りやつまみ食いができない工夫をしてみるのも方法のひとつです。
③見張っておく
単純に、横取りしないよう見張っておくのもよいでしょう。
ほとんどの犬は食べられるだけ一度に食べきってしまいます。
もし途中で残してもそれは満腹の合図ですから、置き餌をせずに片付けてしまってください。
④フードをケチらない
ごくまれに、キャットフードよりも安いからという理由で猫にドッグフードを与えている人もいます。
しかし、キャットフードのほうが栄養価が高いため高価であるのは必然的です。
価格だけに目を向けずに、適したフードを与えましょう。
猫にはキャットフードが鉄則
これまでにお伝えしたように、猫がドッグフードを食べ続けるとタウリンを始め必要な栄養素が不足してしまい、さまざまな疾患の原因となります。
反対に、犬がキャットフードを食べ続けると塩分やカロリーの過剰摂取となってしまうため、どちらも注意しなければなりません。
猫にはキャットフード、犬にはドッグフードときっちり区別して与えましょう。
また、与えるフードは総合栄養食を選べば栄養不足の心配がありません。
ペットは大切な家族ですから、それぞれに適したフードを選び健康管理をしてあげましょう。