ちょこんと垂れた、小さくて可愛い耳。垂れ耳猫のファンは多いのではないでしょうか。
実際、猫を飼う時に垂れ耳の猫に絞って探している人が増えています。
人気が高い垂れ耳猫ですが、近年ではいなくなるといわれているのをご存知ですか?
どうして垂れ耳猫がいなくなるのか、垂れ耳猫が誕生したきっかけを元に説明していきます。
猫ちゃんやペットを飼っている全ての方に、ぜひ読んで考えていただきたい記事です。


垂れ耳猫ってどんな猫?
垂れ耳猫とは文字通り、耳がピンと立っておらず前もしくは横向きに垂れている(折れている)猫のことです。
立ち耳の猫がシュッとした顔立ちの印象があるのとは反対に、垂れ耳の猫は丸みがある顔立ちをしている印象があります。
まんまるな顔の可愛らしさが、留まることを知らない人気の理由です。
では、代表的な垂れ耳猫をご紹介しましょう。
スコティッシュフォールド
まず垂れ耳猫といえば、誰しもスコティッシュフォールドを思い浮かべるのではないでしょうか。その愛らしさから、10年以上不動の人気を誇っています。
立ち耳の子もいますが、やはり人気が高いのは垂れ耳の子。ずんぐりした体つきに、垂れ耳によって丸く見える顔が可愛いですよね。
スコティッシュフォールドの歴史は浅く、1960年ごろにスコットランドで発見されたのがきっかけといわれています。

マンチカン×スコティッシュフォールド(スコマンチ)
足が短いマンチカンと垂れ耳のスコティッシュフォールドのミックスである「スコマンチ」も人気です。
両者のチャームポイントを併せ持っているため、いわば最強の可愛さなのではないでしょうか。
しかし必ずしも短足垂れ耳の子が生まれるわけではなく、足が長い子もいれば立ち耳の子もいます。
そのため、短足垂れ耳のスコマンチは人気が高いのに希少であり、高額で販売されているのです。

垂れ耳の理由とは?
垂れ耳の猫は可愛いですが、実は深刻な問題を抱えています。
スコティッシュフォールドの垂れ耳は、「耳の軟骨の変形」です。骨の変形ですから、いわば「奇形」となります。
1960年ごろ、スコットランドの農村で遺伝的変異により耳が垂れている猫が発見されました。それがスコティッシュフォールドの先祖です。その猫は「スージー」と名付けられました。
スージーを繁殖させたところ垂れ耳の子猫が産まれたため、垂れ耳は遺伝する事実がわかったのです。
可愛らしい見た目から垂れ耳猫を求める人が増え、その後盛んに繁殖が行われて世界中に広まっていきました。


垂れ耳猫が抱える3つの問題
垂れ耳は骨の変形ですので、健康面を含めてさまざまなリスクが発生します。
垂れ耳猫が抱える、特に大きなリスクを3つご紹介します。
①耳の病気
垂れ耳猫の耳は前もしくは横向きに折れ曲がっているため、耳の穴を覆うような形となり通気性が悪いです。
通気性が悪いと蒸れて雑菌が繁殖しやすくなり、耳ダニの発生や外耳炎など、耳の病気の原因となります。
耳の病気を防ぐためには、毎日きちんとケアしてあげなければいけません。
丁寧に拭いてあげたり、定期的に獣医さんに耳のチェックをしてもらったりしましょう。

②骨の変形や先天性疾患
垂れ耳は骨の変形とお伝えしましたが、耳だけでなく全身の骨にも変形が発生する可能性があります。
足の骨の変形で歩行困難になったり、胴体の骨の変形で内臓を圧迫したりとさまざまです。
おじさんのように前足を投げ出して座る通称「スコ座り」は一見面白くて可愛らしい姿ですが、骨の変形が関係しているという説もあります。
症状が出るかどうか、いつ出るかなどは個体差によりますが、遺伝的変異を持っている猫は通常と異なる形成や先天性疾患の症状がいつ出てもおかしくありません。覚えておきましょう。
③繁殖の問題
垂れ耳の猫同士を繁殖させると、ほぼ100%垂れ耳の子が産まれるといわれています。なぜなら、骨の遺伝的変異は優性遺伝だからです。
本来、垂れ耳の猫同士の繁殖は遺伝的変異がより色濃くなってしまい、何らかの変異を持って産まれる確率が高くなるため、タブーとされています。
通常は垂れ耳猫とそうでない猫を繁殖させますが、その場合は垂れ耳の子が産まれる確率は30%ほどです。
「スコティッシュフォールドを飼うなら、絶対に垂れ耳じゃないと嫌!」という人は少なくありません。
垂れ耳猫を求める人が増え続けるがゆえに、タブーである垂れ耳猫同士の繁殖を行い、症状が出る前にペットショップなどに卸す悪徳ブリーダーが増えています。




垂れ耳猫がいなくなるって本当!?
ここまでお伝えした通り垂れ耳は遺伝的変異が要因ですので、垂れ耳猫の繁殖は骨の変形で苦しむ猫を人為的に増やしているのです。
垂れ耳猫が30%の確率で産まれる一方で、残りの70%は立ち耳猫です。
垂れ耳ブームの裏で売れ残った立ち耳猫たちは、行き場をなくして最終的には処分されてしまう問題も起きています。
また、垂れ耳が成長するにつれて立ち耳に変わる場合もあり、「垂れ耳じゃなくなったから」と捨てる人もいるそうです。
そういった理由から垂れ耳猫の繁殖を問題視し禁止を求める声が世界中からあがってきているため、今後垂れ耳の猫がいなくなる可能性は否定できません。
垂れ耳猫を飼うということ
垂れ耳猫は他にはない個性を持っていて、確かに可愛いです。
しかし骨の変形で苦しんでいる猫が多いのも事実。
もしかしたら早い段階で介護をしなければいけなくなる可能性もあります。
遺伝的変異を持って産まれてくる猫ですから、可愛いというだけで安易に飼おうとせず、毎日きちんとケアできるか、治療・通院や介護が必要になった時に最後まで責任を持って愛情を注げるかをよく考えてから決めましょう。


ベルギーで垂れ耳の繁殖が禁止される 追記:2021年6月4日
ベルギーで垂れ耳猫の繁殖と販売が禁止されることが決まったようです。
今後、確実に欧州全体に波及するでしょう。アメリカや日本にも影響があるかもしれません。